グローバルメディア研究センター
センター長からのご挨拶

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  研究センター長  勝間田弘

 メディアとは、個人が国際問題の解決に向けてグローバルに活躍する可能性を広げる存在です。ここでの「個人」とは、一人一人の一般市民です。政府や国際機関のみでなく、一般の市民も、国際社会に点在する政治・経済・社会問題の解決に向けて国境を越えて活躍することができます。メディアとは、それを促す存在にほかなりません。

 これまでメディアは、個人に対して、具体的に何をしてきたのでしょうか。まず、メディアは、個人に情報を提供してきました。とくに新聞やテレビなどのマスメディアは、20世紀から大々的に、個人に世界各地の情勢を伝えてきました。ある国で紛争や難民の問題が顕在化している、ある地域で食糧危機や環境破壊、人権侵害などが深刻化しているといった情報を、迅速に伝達してきました。

 このような情報の伝達は、個人による国境を越えた活動の起爆剤となってきたはずです。メディアからの情報を入手した個人は、現地の状況を把握し、問題の解決に向けて何ができるのかを考え、国際的に行動できるようになったのです。

 さらに、メディアは、個人による情報の発信を可能にしてきました。とくにSNSや動画共有サイトなどのソーシャルメディアは、21世紀からは本格的に、個人が世界に向けて情報を発信するためのプラットフォームとして機能してきました。世界のどこで看過できない問題が発生している、政府や国際機関とは別に市民は何をするべきである、といったメッセージを発信するための場として機能してきました。

 このような働きは、個人がグローバルに活躍することを後押ししてきたはずです。世界に向けた情報発信が可能になった個人は、自身のメッセージに賛同する仲間を各地から集め、問題解決に向けた国際的なネットワークを形成できるようになったのです。

 しかし、今後については注意が必要です。メディアは、個人がグローバルに活躍する可能性を広げるのではなく、逆に、それを狭めるだけの存在になってしまう懸念があります。

 問題を理解する鍵は、情報空間の混乱です。昨今、AIの進化やデジタル技術の発展に伴い、情報空間には混乱が広がっています。正しい情報のみでなく、偽の情報・歪められた情報も大量に流通し、それらを判別することは どんどん難しくなっています。今後は、どこの誰が発信している何が正しい情報なのかを誰にも判断できなくなり、あらゆる情報の信頼性が揺らぐ時代が訪れる可能性が高いといえます。

 そうなると、メディアの位置づけは激変しうると考えられます。メディアは、個人に真偽が不明な情報を提供する一方で、個人が自身のメッセージを正確に他者に伝えることは難しくするだけの存在になってしまう恐れがあります。

 以上を念頭に置くなら、メディアをめぐる諸問題について考えることは、極めて重要な課題だといえます。メディアの何を維持し、何を変革していく施策が、必要になっているのでしょうか。情報空間の混乱を解消するために、日本および世界で、いかなる取り組みが急務となっているのでしょうか。そして私たち市民は、マスメディアやソーシャルメディアと、どのように付き合っていくべきなのでしょうか。センターの活動が、日本国内、そして海外の皆様が、これらの問題について考える契機になれば幸いです。

2026年4月
研究センター長
勝間田弘

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